映像制作のフローと用語説明
これまでの記事でも色々とややこしい用語がいくつか出てきたと思いますが、映像制作にはテクノロジー的な面での特殊な単語とは別に映像でしかほぼ使われない言い回しが多々あり、それは可能な限り個々の記事内容の説明をしながら自然に用語を小出ししていこうと思ってはいますが、一度ここでいくつかの用語をまとめて紹介していこうと思います。
プリプロとポスプロ
カテゴリ欄にもありますが、撮影に入る前までの段階をプリプロ、終わってからをポスプロと呼びます。プリプロダクションとポストプロダクションの略称です。ということはつまり、現場のことをプロダクションと呼称する、ということになりそうなのですが、プロダクションというとどちらかというと制作プロや芸能プロのことを指すようになっているので、現場は現場と呼んでいます。
プリプロは現場が始まるまで、企画・脚本・ロケハン・ロケ地確保・キャスティング・スケジュール管理もろもろの総称です。ロケハンとはロケーションハンティングの略で、ロケ地を探すことです。
現場が終わると今度はポスプロと呼ばれる作業に入ります。編集・CG合成・カラーグレーディング・音響効果・整音などなどの、仕上げ作業の総称です。現場を中心にして手前がプリプロ、後がポスプロだと覚えておいてください。
シーンとカット、ショットとシュート
「シーン〇〇カット〇。本番。ヨーイ…」なんてな言葉を聞いたことはありますでしょうか? 映画は様々なロケ地で撮影していくことになりますが、脚本上では同じ部屋のシーンが何度も登場することがあります。その際、いちいち次はこのシーンだからといって移動しては戻ってきてまた移動して、とするのは時間もお金も無駄になるので同一の舞台はまとめて撮影していきます。また、複数人が登場する場面で主人公を撮る時と別の人物を撮る時に照明を建て替えないといけない、なんてな場合には同じ照明で撮影できるものをまとめて撮影しておかないと同じ舞台なのに照明がコロコロと変わってしまう可能性が出てきてしまいます。順番で撮影できるのであれば脚本通りの時間軸に沿って進めてもいいのかもしれませんが、大抵の場合は撮影順は脚本で起こる出来事の順番通りには進められません。ですので、その順番などを管理しやすくするためにシーンナンバーとカットナンバーが振られていきます。
シーンナンバーとは脚本上の順番で、舞台(柱と呼びます)が変わったら次の番号を振っていき、どこそこのロケ地は何番目の柱で使っているかというのが分かるようになっているものです。そしてカットナンバーとは撮影した画をどう順番通りに並べたらいいのかの指針になるものです。以前の記事でカット割りについて説明しましたが、そのカットと同じ単語です。ひとつの画が、違う画に変わるまでの間をひとつのカットとして分けています。
カットと似たような言葉として、ショットとシュートというものがあります。ショットとはひとつのカメラでスタートからストップまで撮影された画のことで、シュートとは例えばシーン〇カット〇を撮影する時のスタートからストップまでの間のことです。似たような意味に聞こえるかもしれませんが、カメラが複数台立っていた場合もワンシュートはワンシュートですが、例えばその時のAカメラとBカメラで撮られていた場合にはそれぞれのショットは別ショットになります。シュートは現場でのひとまとまりでショットはカメラごとのひとまとまりです。そしてカットは編集上での区切りとしてのひとまとまりの事です。つまり「このシュートは2カメあるんですね」だとか「このBカメのショットはちょっとタイミング的に使いにくいですね」だとか「このカットは気持ち長いので少し削りますか」というように使い分けています。
スケジュールと香盤表
撮影で費用がかさみやすいのは人件費です。ですので低予算界隈では撮影期間はほぼイコールで撮影予算で決まってしまう、と言っても過言ではありません。どうにか短く撮影が終わるようにロケ地を工夫してスケジュールを立ててから本番を迎えます。その日ごとに撮影場所はどこか、今日はどのシーンを撮るのか、登場人物は誰が必要なのか、小道具は、などといったことが分かりやすくなるように端的にまとめて書かれたものを香盤表と呼んでいます。
撮影日数が限られている現場では脚本・ロケ地・香盤を詰めていくのは非常に重要になってきます。明らかにシーン数が少ない、なんていう場合は撮影時間の削減を移動の削減で賄おうとしていたからだ、という具合です。もちろん、シーン数が少ない映画はものすごく安っぽくなります。せめぎ合い。予算内に収めつつも安っぽくはならない方がいい、みたいなバランスを取る必要が出てきます。もちろんショット数も少なければ少ない方が撮影は早く進みます。映画製作では、あらゆる面でのバランス取りとせめぎ合いが、その本質となるといってもいいでしょう。
撮影にはどのような役職が欲しいか
ではいざ現場、という時にはどのような人員が必要になってくるのでしょうか。
まずは俳優部。そして撮影部と照明部。録音部。演出部と制作部。ちなみに演出部は演出関連で制作部は現場関連の補佐的なものだと思ってください。その他小道具・衣裳・ヘアメイク・アクション・車両。スチール。などなど。予算がない場合は複数兼業の人員もあるでしょう。ちなみに映像寿司でやっているお化け屋敷映像の場合は、現場には自分たちは3人+先方の担当者がひとり、で出演している方にも半スタッフのように働いていただいて成立している感があります。非常に自主映画ライクな座組になっているので、しっかりとしたいわゆる映像制作会社が同じことをするのは難しいだろうという気はしています。ちなみに自分はだいたいコンテ・撮影・編集・合成・音響効果・整音・グレーディングを7役兼業して担当しています。
撮影が終わったら何が始まるのか
撮影が終わったら収録した映像データ、場合によっては音声データをPCにコピーします。音声別録りならば音声と映像を同期させます。低予算界隈では時間がないということもあって、基本的に最終ショットがオッケーになるように現場を進めていますので、各ショットごとに最終トラックを抜粋してシーンごとにつないでいきます。シーンごとにつなぐよりも前にシーンナンバー順に並べ替えても問題はありません。
で、ひとまず脚本通りの形につないだら、その後で再生しながら詰めていきます。このタイミングで監督と立ち合い編集をし、CG出しをしつつ音楽担当の方に一通りつながったものを送ります。同時進行でもっと詰めていって画が固まったら音響効果担当の方にSEを付けてもらいます。担当者がついていなければ自分でSEを付けます。この頃には音楽が上がってくるのでそれを載せて音量調整。色味調整をしつつ上がってきたCGを載せてエンドロール原稿を貰って、一通り全部が埋まって準完成形と言える形になったら一旦書き出してメーカーチェックに出します。
チェック後にメーカーから修正要望が来て、修正対応した後に書き出して納品となります。
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